マクガバン・レポート(報告書)”って知っていますか?
1977年にアメリカで発表された「アメリカ合衆国上院栄養問題特別調査委員会報告書=委員長の名前をとって、通称“マクガバン報告書”」について少し紹介しましょう。
“マクガバン報告書”は、健康関係の話しの際によく言及されるので、聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、具体的な内容についてはご存じない方も多いようですので、ここで簡単にご紹介します。
報告書制作のきっかけ
1970年代のアメリカは、ガン、心臓病、糖尿病等の生活習慣病患者の増加が看過できない状態にまでなっていました。
国民医療費は限界にまで達しており、「アメリカは戦争ならどこにも負けないが、国民の病気で滅びてしまうだろう」とまで言われていました。
「医学が世界最高水準にまで達しているにもかかわらず、病気にかかる人は増える一方。医療費もうなぎ登り。「なぜだろう?」と当時のフォード大統領は疑問に思い、その疑問の究明のために、上院議会に栄養問題特別委員会を設置、その委員長に民主党の大統領候補でもあったジョージ・マクガバン上院議員を指名したのです。
委員は当時の大物上院議員であるパーシー、ドール、ケネディー氏等も参加し、アメリカの威信をかけた調査が行われました。
そして、3,000人の専門家が7年間に渡って精密な調査を行い、1977年に正式名「アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書」、通称「マクガバン・レポート」が発表されたのです。分量は5千ページにもわたる大がかりなものですが、この報告書はアメリカのみならず多くの国で衝撃をもって受け取られました。
各国の対応
ヨーロッパの諸国ではすぐに追試が行われたのと比べ、日本では政府も医学界も反応は極めて弱く、すでに25年もたった現在でさえ、栄養学に対する意識の低さは相変わらずのようです。
その結果、アメリカでは明らかに生活習慣病の患者数が減少していますが、逆に日本ではいまだにその数が増え続けているのではとも考えられます。
現在の我々の食事は不自然で全くひどいものである。この食事が癌、心臓病、糖尿病などの現代病を生んでいる。
現代の食事は我々が気が付かないうちに、かつてとは全く違ったものになってしまっている。
特にカルシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンEの不足がひどい。これは典型的な若死のデータである。これら栄養素の不足は調査対象者の生活水準と全く無関係である。
現代の医者は栄養素の知識が低い。このために間違った食事を与えられ、病気が治らなかったり、治りが遅れるケースが多い。
従来の医学は食事と病気の関連といった栄養の根本問題を、全く無視してきた片目の医者だ。アメリカの医学大学で栄養のコースを必須科目にしている大学はわずか4%にしか過ぎない。 『医者の再教育が必要だ。』
このような単純な事に気が付かなかったのは、20世紀の医学に特有な一つの思考路線、偏った思考路線が支配したためだった。
それは一言でいうと、病菌退治の医学の思考路線だった。
その結果は、栄養知らずの医者ばかりを生んだ。しかも、その片目性に気付かず、それが医学の全てだと考える風潮を世間に浸透させた。
現代病は食源病
現代病が食源病であるということを明確に示す資料がNCI(アメリカ国立ガン研究所)発表しています。
調査の結果、日本の食事習慣を持ち込んでいる一世やその一世に育てられる二世は、大腸ガンの発生率がアメリカ人ほど高くありませんが、三世ともなるとアメリカ人とほとんど変わらなくなることがわかりました。
食事習慣がアメリカ人に完全に同化したためと思われます。 この例が示すように、現代病の原因は、人種や体質などの要因は全くないとは言えませんが、実質上食事の内容によるのだということが明らかだと思います。
栄養過剰時代の栄養失調
以上のような分析から、委員会では当時のアメリカ国民の食事について、「栄養過剰時代の栄養失調」と結論づけています。その上で、以下のような食生活改善の指針を発表しています。
◇「…病気を治す根本は薬ではなく、体の持っている本来の修復能力である。それを高めるのに最も大切なものは、食べ物に含まれる栄養素である…」
◇「…人間の体は、それを構成している一つ一つの細胞が正常なバランスを取っていれば病気にならない。また、細胞を正常に働けるようにしてやれば、病気は治る。 細胞に栄養を与えることが、これからの新しい医学である。」また、アメリカ上院文書264号では、次のように書かれています。
セルフ・メディケーションの時代へ
アメリカでは、この上院文書を初めとして公的機関から国民の栄養に関する報告や勧告が数多く出されており、マスメディアも大々的にそれらを報告していきました。
その結果、食生活を改善することにより、自らの健康を考えていくという考え方が浸透していきました。
このような考え方を「セルフ・メディケーション(Self Medication)」と言います。
アメリカでは日本のような健康保険制度がなく、ちょっとした病気でも多額のお金が必要になるということもあり、今では「セルフ・メディケーション」は当たり前のことになっています。
日本では、こうした動きがとても鈍く、せいぜい細切れの知識を紹介するテレビの健康番組、各種健康雑誌の発行、新聞や雑誌での健康記事など、まだ民間レベルでしかありません。
マクガバン・レポートの認知度も極めて低く、一部の健康関連従事者に携わる人が知っている程度です。
<“マクガバン報告書”から約30年>
マクガバン報告書はきっかけでした。アメリカではその後、同報告書を検証する多数の研究が行われ、それらが報道されマスコミが大きく取り上げました。
そして学校における栄養教育が真剣に行われるようになりました。そうした流れの中で、まずビタミン・ミネラルの重要性が一般に知られるようになり、ビタミン・ミネラルのサプリメントブームが到来しました。
実は私が始めてビタミン・ミネラルのサプリメントに触れたのも、あるアメリカの販売会社のものでした。もう20年以上前のことです。
<「食」の改善はどこから?>
翻って日本の現状を考えると、まだまだという状況です。
日本においては「オーガニック」の基準自体が甘く、アメリカやヨーロッパの基準に照らしたら、まだオーガニック農場は皆無といってもよい状態です。
つまり、現代日本では、こうしたオーガニック作物が手に入りにくい状態にあるのです。
もちろん、やや甘い基準ではあっても「有機」と指定されたものの方がそうでないものよりよほど良いことは確かですから、ぜひそうしたものを選んでください。
◇ 「人体の健康は、タンパク質・糖質・脂質・ビタミンよりも、明らかに、直接的にはミネラルによって左右されているのである。」
◇「何百万エーカーの土地で耕作されている食物(果物、野菜、穀物)にはある一定のミネラルは含まれておらず、それらの食品をいくら食べたとしても、我々はその栄養素を摂ることはできない。食べ物の価値には大きな開きがあり、あるものは食物として価値がないほどである。」
当時の日本では、一般の人はビタミン・ミネラルがいかに重要な栄養素なのかを知っている人はほとんどいませんでしたが現在は、ビタミン・ミネラルが大切な栄養素であるということはかなり知られてきたようです。
しかし・・・『なぜ大切なのか?』ということになると、いまだにそれほど理解されているとは言えないような気がします。
むしろ、特定の栄養成分の働きがテレビの健康番組や健康雑誌で取り上げられ、それに踊らされている人がいるというのが現状では?
いわゆる三大栄養素の他にも大切な栄養素があることは、今やほとんどの人が知っている時代となりました。 しかし、その知識は極めて断片的で、相互の整合性はありません。
結局“マクガバン報告書”から約30年経っても、日本人の健康に関する知識は、まだ個別的なものに過ぎず、トータルなものにはなっていないということだと思います。
現代人は様々なライフスタイルを持っています。 例えば生活時間一つをとっても、バイオリズムに反した生活を送らざるを得ない人もたくさんいます。
そうした改善したくても改善しきれないところまで無理する必要はありません。 自分のライフスタイルで無理のない「食」の改善から取り組みましょう。
ただ基本に据えたいものもあります。その一つが野菜や果物を十分に食べることがあります。
しかし、これはそとで働いている人にとっては至難の業です。少なくとも、家に帰ってきてからは野菜と果物をふんだんに食べて欲しいものです。
ただ“マクガバン報告書”でも指摘しているように、食品における栄養素の減少は大きな問題です。
こうした中で、無農薬・無化学肥料農法による作物に注目が集まるようになりました。
現代の農薬や化学肥料をたっぷり使った作物より、明らかに栄養能力が高いことが分かったからです。
アメリカやヨーロッパでは無農薬・無化学肥料農法はかなり普及してきています。
いわゆるオーガニック農法ですが、これについては厳しい基準があり、公的な認定が必要になっています。 アメリカの認定農場の割合はまだ10%台と言われますが、ヨーロッパでは国によっては50%を超えているところもあるようです。